夏の強い日差しが頭痛を呼ぶ理由――「光過敏」のしくみと、片頭痛予防薬の新しい選択肢
梅雨が明けると強い日差しが戻ってきます。診療でも「外に出るとまぶしくて頭が痛くなる」「サングラスがないと片頭痛が始まってしまう」というお声をよく伺う季節がやってきます。
なぜ片頭痛で光がつらくなるのか
片頭痛発作中に光がつらくなる「光過敏(羞明)」は、片頭痛の代表的な症状の一つです。多くの方は「光が頭痛の引き金になった」と感じますが、近年の研究では少し異なる見方が示されています。光をきっかけに頭痛が悪化したと感じる場合でも、実際には片頭痛発作そのものがすでに始まっていて、その初期症状として光に敏感になっていることが多いと考えられているのです。つまり「光のせいで頭痛が起きた」のではなく、「頭痛がすでに始まっていたから光がつらく感じられた」という順序であることが少なくありません。この背景には、片頭痛の痛みに深く関わる三叉神経血管系という神経の仕組みが続いていることが関係していると考えられています。また、片頭痛のある方は光のすべての波長に同じように敏感というわけではなく、特定の波長帯の光が痛みを強めやすいことも分かってきています。
夏は、日差しの強さそのものに加え、屋外と屋内の明暗差、寝苦しさによる自律神経の乱れ、そして発汗による軽い脱水なども重なりやすく、この光過敏が一年の中でも特に表面化しやすい季節といえます。
今日からできる夏の光対策
外出時はサングラスを、頭痛が始まってからではなく早めに着用し、刺激の総量を減らすことが大切です。レンズは色の濃さよりも、自分に合った波長をカバーするものを選ぶとよいでしょう。室内でも直射日光が目に入る席を避け、ブラインドを活用するなど明暗差を小さくする工夫も効果的です。頭痛日誌に外出時間やサングラスの有無も記録しておくと、診察時に光と頭痛の関係を一緒に整理しやすくなります。
最新の予防治療:経口CGRP受容体拮抗薬
これまで注射による抗CGRP抗体薬の予防治療をご紹介してきましたが、毎日1回飲むタイプの経口CGRP受容体拮抗薬(経口ゲパント)も、国内で使える治療の選択肢として広がってきています。CGRPは片頭痛発作の痛みや炎症に関わる物質で、その働きをブロックすることで発作そのものを起こりにくくすることを目指す予防薬です。海外の大規模な臨床試験では、12週間の内服によって1か月あたりの片頭痛日数が、プラセボと比べて有意に減少したことが報告されています。注射が苦手な方や、より手軽に毎日続けられる予防法を探している方にとって、新しい選択肢になるでしょう。どの治療が向いているかは頭痛の頻度や重症度、これまでの治療歴によって異なります。
「光がつらくて外出が憂うつ」「注射には抵抗があるが予防薬を試したい」という方は、お気軽に当院までご相談ください。
文責:岡田満夫(専門医) 最終更新日:2026年6月29日
参考文献
- Artemenko AR, Filatova E, Vorobyeva YD, Do TP, Ashina M, Danilov AB. Migraine and light: A narrative review. Headache. 2022 Jan;62(1):4-10. doi:10.1111/head.14250. PMID: 35041220.
- Ailani J, Lipton RB, Goadsby PJ, Guo H, Miceli R, Severt L, Finnegan M, Trugman JM; ADVANCE Study Group. Atogepant for the Preventive Treatment of Migraine. N Engl J Med. 2021 Aug 19;385(8):695-706. doi:10.1056/NEJMoa2035908. PMID: 34407343.
