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夏本番の「温度差頭痛」と、知っておきたい最新の片頭痛予防治療

[2026.06.27]

梅雨明けが近づき、東京もいよいよ本格的な夏に向かっていきます。診療の現場でも、「外は猛暑なのに、オフィスや電車はエアコンでガンガンに冷えていて、その出入りで頭が痛くなる」というお悩みをよく耳にする季節になりました。

今回は、この夏特有の「温度差」が頭痛にどう関わるのかを整理したうえで、近年大きく進歩している片頭痛の予防治療(CGRP関連薬)についてもご紹介します。

なぜ夏は頭痛が増えるのか

夏の頭痛には、いくつかの要因が重なっています。

  • 外気と室内の温度差:30℃を超える屋外から18〜20℃台に冷えた室内へ移動すると、血管が急激に収縮・拡張を繰り返します。片頭痛は血管や三叉神経系の過敏性が関わる病気であるため、この温度変化が誘因になりやすいと考えられています。
  • 発汗による脱水:気づかないうちに水分が失われ、血流や脳の代謝に影響を与えます。
  • 強い日差し・紫外線:光感受性が高い片頭痛患者さんにとって、まぶしさ自体が誘因になることがあります。
  • 睡眠の質の低下:寝苦しい夜が続くと自律神経が乱れ、痛みに対する感受性が高まります。

実際に、片頭痛のトリガーに関する研究では、暑さ(heat)を誘因として報告した患者が全体の3割程度に上るとされており、ストレスや睡眠障害に次いで頻度の高い誘因の一つとして位置づけられています。

一方で、気温と片頭痛の関係を扱った近年のレビューでは、すべての患者さんに当てはまるわけではなく、もともと「温度の変化に敏感」な体質を持つ一部の患者さんで特に関連が強いことが指摘されています。つまり、「夏になると頭痛が増える」という方は、決して気のせいではなく、ご自身の体質的な傾向として捉えていただいて良いということです。

今日からできる「温度差頭痛」対策

  1. 室内と屋外の温度差を5〜7℃以内に:可能であれば、オフィスや自宅の冷房設定を27〜28℃程度に。
  2. 首元・肩を冷やしすぎない:薄手のストールやカーディガンを一枚持っておくと、血管の急激な収縮を防げます。
  3. こまめな水分補給:のどが渇く前に、コップ1杯を意識的に。カフェインやアルコールは利尿作用があるため摂り過ぎに注意しましょう。
  4. 外出時は日陰・サングラスの活用:強い光の刺激を減らすことも、片頭痛の予防につながります。
  5. 頭痛ダイアリーで「自分の夏パターン」を知る:いつ・どんな状況で頭痛が出るかを記録しておくと、診察時の治療調整にも役立ちます。

最新の片頭痛予防治療「CGRP関連薬」について

これまで片頭痛の予防には、もともと血圧や精神疾患のために開発されたお薬(β遮断薬や抗うつ薬など)を転用することが一般的でした。しかし近年、片頭痛の発生に直接関わる「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質そのものを標的にした治療薬が登場し、世界的に予防治療の主流になりつつあります。

CGRPは脳の血管や三叉神経から放出され、片頭痛発作の痛みや炎症に深く関わっていることが分かっている物質です。このCGRPの働きを抗体でブロックする「抗CGRP抗体薬」(エレヌマブ、フレマネズマブ、ガルカネズマブなど)は、月1回程度の注射で発作頻度を減らすことができ、従来薬に比べて副作用が少なく続けやすいという特徴があります。2025年に発表された review では、長期使用においても安全性と有効性が確認されており、米国頭痛学会(AHS)の2024年版コンセンサスでも、こうした抗体薬を片頭痛予防の第一選択として検討すべきとの位置づけが示されています。

当院では、片頭痛の頻度・重症度や、これまでの治療歴を丁寧にお伺いしたうえで、内服薬(リメゲパントなどの新しい急性期治療薬を含む)と注射製剤のどちらが適しているか、一人ひとりに合わせてご提案しています。「市販薬を飲む回数が増えてきた」「予防薬を試したけれど効果が今ひとつだった」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

夏の頭痛は、温度差・脱水・光・睡眠不足といった複数の要因が重なって起こりやすくなります。日々のセルフケアで予防できる部分も多くありますが、頭痛が頻繁で生活に支障が出ている場合は、CGRP関連薬をはじめとした新しい治療の選択肢があることをぜひ知っておいてください。

体調に不安がある方、頭痛の悩みが続いている方は、お気軽に当院までご相談ください。


文責:岡田満夫(専門医) 最終更新日:2026年6月27日

参考文献

  1. Kelbert J, Tobin JA. The Effect of Ambient Temperature on Migraine Disease: A Scoping Review. Brain Behav. 2025;15(8):e70708. doi:10.1002/brb3.70708. PMID: 40842130.
  2. Nicol KS, Burkett JG. Review: An Update on CGRP Monoclonal Antibodies for the Preventive Treatment of Episodic Migraine. Curr Pain Headache Rep. 2025;29(1):55. doi:10.1007/s11916-025-01365-4. PMID: 39998706.

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