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慢性片頭痛に対するボツリヌス注射という選択肢

[2026.06.06]

梅雨入り間近のこの時期、気圧の変動が激しく「頭痛がひどくて…」というご相談が増えています。市販薬や処方薬を試しても改善しない方に知っていただきたいのが、慢性片頭痛に対するボツリヌス注射です。欧米では広く普及し、日本の頭痛診療ガイドライン2021でもグレードAで強く推奨されていますが、日本では現時点で保険適用がなく自費診療となります。
慢性片頭痛とは
月15日以上・3か月以上続く頭痛のうち、8日以上が片頭痛の特徴(ズキズキ・光過敏・吐き気など)を伴う状態を「慢性片頭痛」といいます。痛み止めの乱用による「薬物乱用頭痛」を合併しやすく、仕事や生活全体に大きな支障をきたします。
なぜ頭痛に効くのか
「シワ取り注射」のイメージが強いボツリヌス毒素ですが、慢性片頭痛への作用は全く別のメカニズムです。末梢神経からの痛みの伝達物質(CGRP・サブスタンスPなど)の放出を抑制し、三叉神経血管系の過敏さそのものをリセットすることで、片頭痛の発症を予防します。
治療の実際と効果
頭部・頸部の7筋群・31か所に155〜195単位を注射し、約12週ごとに繰り返します。所要時間は15〜20分ほどで、処置後すぐにお帰りいただけます。
大規模臨床試験(PREEMPT)および2024〜2025年の最新データ(Silberstein et al. 2024; Ahmed et al. 2025)では、以下の効果が確認されています。
● 月間頭痛日数が平均8〜9日減少
● 患者の約50〜60%で50%以上の改善
● QOL・鎮痛薬使用日数の改善が56週以上持続

効果が安定するまでに2〜3回の治療(約6〜9か月)を要することがあります。副作用は注射部位の痛み・一時的な頸部違和感などが主で、重篤なものは稀です。
日本での現状と費用
米国(2010年FDA承認)・欧州(2012年EMA承認)では標準治療として普及していますが、日本では慢性片頭痛への薬事承認が取得されておらず、全額自費診療となります(1回あたり数万円程度が目安)。ガイドラインには「患者救済のため早期の保険適用が望まれる」と明記されており、頭痛専門医として早期承認を強く期待しています。
なお、抗CGRP抗体薬(エムガルティ®・アジョビ®・アイモビーグ®)は現在保険適用のある注射製剤です。患者さんの状態・生活スタイル・費用面を含め、最適な予防治療をご提案します。お気軽にご相談ください。

文責:岡田満夫(脳神経外科専門医、頭痛専門医)
最終更新日:2026年6月6日
【参考文献】
1. Silberstein SD, et al. Sustained benefits of onabotulinumtoxinA treatment in chronic migraine: An analysis of the pooled PREEMPT randomized controlled trials. Headache. 2024;64(7):838-848. PMID: 38982666.
2. Ahmed F, et al. Real-World Safety and Efficacy of 156 U - 195 U OnabotulinumtoxinA in Adults With Chronic Migraine: Results From the REPOSE Study. BMC Neurol. 2025;25(1):197. PMID: 40329224.

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